教員は、世間から見ると安定した職業として人気が高く、目指している方も大勢います。
毎年行われる教員採用試験の倍率も、自治体や教科にもよりますが、数十倍あるのが普通です。
しかし、そのような厳しい関門を突破して夢を叶えたものの、「転職したい」と考える教員はたくさんいます。
それはいったい、どのような理由からなのでしょうか?
また、
とも言われますが、それは本当なのでしょうか?
この記事を最後まで読めば、あなたが今後転職についてどのようすべきかがわかるようになるでしょう。
1.教員が転職しようとする理由とは?
転職を考えている教員は、意外とたくさんいるのが現実です。
いったいどのような理由から転職に踏み切るのでしょうか?
1-1.そもそも転職する先生ってどれくらいいるの?
文部科学省の、平成28年度学校教員統計調査の結果を見てみると、全国の小学校、中学校、高等学校には約84万人の教員が勤務しています。
その中で、平成27年度の1年間で転職のために離職した教員の数は、小学校で1,620人、中学校で1,343人、高等学校で1,627人となっています。
合計すると4,590人となり、教員全体の0.5%ほどです。
これは、民間での転職率と比較すると、かなり少ない数字と言えるでしょう。
人口 | 離職者 | 離職率 | |
民間全体 | 約5,596万人 | 約510,000人 | 0.91% |
教員全体 | 約84万人 | 4,590人 | 0.55% |
※民間の数字は総務省統計局労働力調査より引用
本当は教員を辞めて転職したいのに、
などの思いから、我慢して教員を続けている方も少なくないのです。
では、そのような教員が転職を決意する理由には、どのようなものがあるのでしょうか?
1-2.前向きな理由
・今とは違う分野でスキルや経験を積み重ねたい!
このような前向きな理由から転職を決意する教員もいないわけではありません。
しかし、そのような前向きな理由よりも、以下に紹介するようなネガティブな理由で転職する教員の方がはるかに多いのが現実です。
1-3.ネガティブな理由
・理不尽な保護者の要求に対応しきれない
・教員同士の人間関係が辛すぎる
このようなネガティブな理由から転職を決意する教員がほとんどと言ってもよいでしょう。
確かに、教員には実質休憩時間もなく、時間外労働が多いのも現実です。
モンスターペアレントと呼ばれる理不尽な保護者も多いですし、教員同士のいじめも残念ながら存在します。
最悪の場合、心身を壊してしまい現場を去らなければならなくなる教員も数多くいるのです。
2.教員の転職って難しいの?
教員からの転職は難しいと言われています。それはどのような理由からなのでしょうか?
2-1.こんな理由で難しい!
教員の転職が難しい理由は、大きく分けて2つあります。
理由その1
クラス担任などを持っていたりすると、年度途中での退職は難しく、教員の退職は毎年3月末に集中します。
しかし、民間企業などの中途採用は、人員が必要な時に随時募集をかけます。
そうすると、希望と一致する企業があっても、タイミングよく転職することが難しくなってくるのです。
理由その2
そして、さらに大きな理由となるのが、教員にはビジネススキルが不足しているという点です。
多くの教員は、民間企業で働いた経験がありません。
つまり、売り上げや利益のために働くという経験がほとんどないのです。
このことが、企業側から敬遠される原因となってしまいます。
2-2.年代別の難しさ
教員が転職する難しさは、年代ごとに特有のものもあります。
2-2-1. 20代の場合
20代の教員は、教員としての経験年数がそれほどないので、実は民間企業からはそれほど敬遠されません。
教員とは違う業界に飛び込んでも、なじんでいける可能性が高いと評価されることが多くなります。
2-2-2. 30代の場合
30代になると、段々と他の業界への転職が厳しくなってきます。
約10年間教員をやってきているので、「今さらほかの業界に行くのは抵抗がある」と感じる方も少なくありません。
また、一般的な転職であっても、35歳以降の転職はかなり難しくなります。
30代も前半であればまだ未経験の業界にチャレンジしやすいのですが、後半になるとそれはハードルが高くなってきます。
ただ、教員としての経験をある程度生かせる業界であれば、スムーズに転職できる可能性もあるでしょう。
2-2-3. 40代の場合
40代以上の教員は、さらに転職のハードルが高くなります。
「ビジネススキルが足りない」「プライドが高くて偉そう」など、教員はただでさえそのようなイメージが強く、民間企業からは敬遠されやすくなります。
それがベテランの教員となればなおさらです。
転職を成功させるためには、転職先で生かしていける特別なスキルや経験が必要となるでしょう。
また、ベテランの教員は、若手よりもずっと高い収入を安定的に得ています。
しかし、この年齢で民間企業に転職すれば、同レベルの収入を得られる保障はありません。
3.転職先はどこにする?それぞれの特徴
教員の転職先としては、どのようなところが考えられるのでしょうか?それぞれの特徴もみていきます。
3-1.私立学校で教員を続ける
公立学校で勤務している教員であれば、私立学校に転職して教員を続けるという選択肢もあります。
私立学校に転職するためには、それぞれの学校の採用試験を受ける必要があります。
採用試験は筆記試験の他にも、論文や面接などの試験を受けるようになることがほとんどです。
試験の難易度は学校によって異なるので、一概には言えませんが、教員としての専門性や人間性がしっかりチェックされることは間違いありません。
3-2.教員以外の公務員を目指す
公立学校の教員は公務員なので、収入も安定していますし、福利厚生も充実しています。
そのメリットを手放したくない方は、市町村職員など、教員以外の公務員を目指してみるのも一つです。
教員以外の公務員になるためには、公務員採用試験を受け直す必要があります。
採用試験には、教養試験、論文、面接などがあります。
3-3.民間企業に転職する
教員も公務員も続けないのであれば、残るのは民間企業への転職です。
3-3-1.教育関係の企業
教育関係の企業では、教員としてのスキルや経験を存分に生かすことができます。
スキルを活かしたい方は
例えば、塾や予備校の講師、家庭教師などは、「勉強を教える」というスキルを武器にしながら転職できる分野です。
子どもが好きな方は
「やはり子どもが好き!」という方には、おすすめできる転職先です。
3-3-2.それ以外の企業
教育関係以外の企業でも、教員ならではのスキルや経験を生かせるところはあります。
教員に必要な事務処理能力やPCスキルは、事務職に転職しても生かすことができます。
営業職や接客業などに転職すれば、高いコミュニケーション能力を生かすことができます。
3-4.資格が必要な職業に転職する
新たに教員以外の資格を取得し、それを生かした専門性の高い職業に転職するという選択肢もあります。
代表的なものを紹介します。
3-4-1.介護福祉士
コミュニケーション能力を生かせるのはもちろん、需要がどんどん増している職種なので、安定して働き続けることが可能です。
人とかかわるのが好きな方、体力に自信のある方などは、介護福祉士への転職に向けて資格を取得するのもよいでしょう。
3-4-2.医療事務
医療機関で働く事務職員も、教員にはおすすめできる転職先の一つです。
事務処理能力はもちろん、PCスキルや、患者様とのコミュニケーションを図れるスキルも求められます。
4.教員の転職を成功させるために
難しいとされる教員の転職ですが、成功させるためにはどのようなことが大切になるのでしょうか?
4-1.成功のためのポイントや注意点
教員の転職を成功させるためには、以下のようなポイントや注意点をおさえておきましょう。
4-1-1.自分が何を大切にしながら転職したいのかを考える
収入の安定なのか、仕事内容なのか、ワークライフバランスなのか、人それぞれ大切にしたいものは異なってきます。
もちろん、100%満足できる職場を見つけるのは至難の業です。
4-1-2.「できること」と「やりたいこと」を整理する
自分にどのようなスキルがあり、それを転職先でどのように生かしていけるのかをよく考えましょう。
PCスキルやコミュニケーション能力など、教員としての経験があるからこその「できること」が何かしらあるはずです。
同時に、自分の「やりたいこと」を考えておくことも大切です。
4-1-3.スケジュール管理をしっかりと!
教員には、退職するタイミングの難しさがあります。
キリよく年度末で退職するのか、年度途中でも退職するのか、まずは退職→転職を行う時期をはっきりさせましょう。
4-2.志望動機や自己PRの伝え方
教員としての経験の中でどのようなスキルを身につけていて、それをどのように転職先で生かしていきたいのかを中心に伝えていくと、印象が良くなるはずです。
一方、教員だったということだけをアピールするのは逆効果です。
先ほどお伝えした通り、教員に対してマイナスイメージ(ビジネススキルがない、プライドが高いなど)を持っている人も少なからずいます。
4-3.おすすめの転職サイトやエージェントはある?
転職サイトと転職エージェントは、似ていますが少し違います。
転職サイトでは、求人を調べるのも応募するのも自分で行いますが、転職エージェントではプロのスタッフによる様々なサポートを受けながら、転職活動を行うことができます。
おすすめ1 『リクルートエージェント』
おすすめの転職エージェントは色々ありますが、中でも『リクルートエージェント』は求人数が業界ナンバー1で、教員の転職支援実績も豊富にあります。
おすすめ2 『doda(デューダ)』
URL https://doda.jp
おすすめ3 『Education Career』
URL https://education-career.jp/
5.その転職、本当に後悔しない?
深く考えないまま教員から転職してしまうと、後悔するケースもあるようです。
5-1.教員から転職した人の体験談
教員から転職した方の体験談は、以下のようなポジティブな声が多くなっています。
https://twitter.com/performance_kwt/status/1129979105758212097 https://twitter.com/hkmxtp2/status/1016984437488115712しかし、中にはこのような声もあります。
教員辞めるの後悔してませんか?という質問がよくあります。
私の場合、なりたい職業だったから、後悔はありますよ。
ただ私には民間企業に行く経験などがどうしても必要だったので思い切って転職しました「辛いから」も1つの理由になりますが、同じくらい転職して何を得たいか考えてみてください。
— Udai@簿記1級 (@minato1739) June 21, 2019
転職は慎重にならないと後々になって後悔することもあります。ただ、思い切った決断も人生においては重要です。
5-2.後悔しない転職のために
転職先選びは慎重に行うことが大切です。
転職先を間違えてしまうと、教員よりも労働環境が悪い職場はいくらでもあります。
もしもうつ病などの精神疾患が理由で転職を考えている場合は、休職などの制度を利用して、心の状態が十分回復してから判断しましょう。
6.まとめ
教員が転職することは、確かに簡単なことではありません。
タイミングの難しさ、世間からのマイナスイメージ、年齢による難しさなどもあります。
しかし、転職を成功させた「元教員」の方もたくさんいます。
決してそこに居続けることだけがすべてではありません。
「何を大切にしながら転職したいのか」
「自分には何ができて、何がしたいのか」
これらを十分に考えた上で、心の底から「転職してよかった!」と言えるような転職を、ぜひ実現させましょう。